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引用元: http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1424001836/

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108: オプ速さん 2015/02/24(火)21:25:02 ID:AlB
裸王の城 謁見室前

赤鬼「ふぅ…何とか時間には間に合ったな。金棒の布は緩んでない、外套は謁見室の中で脱いだ方がいいか…と、これで失礼はないぞ」

赤ずきん「あら、やっぱり気にしているのね?」

赤鬼「うむ、ああは言ったもののオイラのおとぎ話で迷惑かけたことをきちんと謝っておかないといけないからな…赤ずきんは大丈夫か?コーヒーの苦みは取れたか?」

赤ずきん「…ええ、チョコレートでごまかしているところよ。ところでこのことは雪の女王にはもちろんキモオタ達にも内緒よ?」

赤鬼「それは構わんが、それこそ気にしなくていいんじゃないか?」

赤ずきん「いいえ、どうせキモオタの事ですもの…コポコポ言いながら煽ってくるわよ、例えば…『ちょwwwコーヒーが苦いとか赤ずきん殿は子供ですなwww』…とか言ってくるのよ?耐えられないわよ、そんなの」

赤鬼「ハッハッハッ!確かに言ってきそうではあるけどな!そこでティンクがキモオタを叱るんだろ?」ハハハ

赤ずきん「笑い事じゃないわよ。彼は善人だけどあの煽りはものすごく屈辱なんだから」

赤鬼「【桃太郎】の時は賑やかでよかったよな。あいつら今頃どうしてんだろうな、うまくやってるといいけどな」

赤ずきん「問題ないでしょう、問題があればおはなしウォッチで連絡をよこしているはずだもの」

赤鬼「ちげぇねぇな…お、どうやら順番来たみたいだぞ」

兵士「ではー次の方ー!アカオニさん、アカズキンさんーどうぞー」

109: オプ速さん 2015/02/24(火)21:28:29 ID:AlB
謁見室

赤ずきん「失礼します」コンコンガチャ


ド ド ド ド ド ド ド ド ド


鬼神『ヌ…ッ!コノ気迫…裸ノ王…!!赤鬼ヨ、早急ニ我ヲ出セ…!』

赤鬼「……さて、外套を脱がねば」ファサ

鬼神『ヌゥ…貴様、神ナル鬼デアル我ヲ無視スルトハ…何処マデモ愚カナ奴ヨ…!』

赤鬼「鬼神、少し黙っていてくれ…」ボソッ

赤ずきん「お久しぶり、裸王」ニコッ

裸王「うむ!遅かったではないか!よくぞ来た!受付に『アカズキン』という署名があると大臣から聞いてお前達が来るのを待っていたぞ!」ムキムキッ

赤ずきん「あなたは相変わらず上半身裸なのね」

裸王「おお、裸であるのは当然だ!筋肉こそ我がアイデンティティ!自慢の筋肉に布を被せては美しさを誇示できぬわ!なんなら今ここでポージングを披露しても構わんぞ」ガッハッハ

赤ずきん「いいえ、遠慮しておくわ。謁見時間にも限りがあるもの」

裸王「そうか?それは残念だ!ガーッハッハッハ!」ポージング

110: オプ速さん 2015/02/24(火)21:33:00 ID:AlB
裸王「そしてお主は確か…赤鬼だったかな?」マッチョ

赤鬼「裸の王、オイラは赤鬼と申す者。以前、私のおとぎ話【泣いた赤鬼】では失礼な振る舞いを…」スッ

裸王「ガッハッハ!固いぞ固いぞ!柔軟運動が足りていないのではないか!?」マッスル

赤鬼「いや、しかし…あの時のオイラは悪しき鬼に肉体を奪われていた…とはいえ王に狼藉を働いたことは事実…!」

裸王「ふむ、そのようなすばらしい筋肉を持っていながら随分と繊細なのだなお主は…気にするでない、そのおかげで私もお主のような猛者と拳を交えることができたのだからな!
西洋の国王が日ノ本の鬼と手合わせする機会など本来ならば一生かけても巡り会えぬものよ」ガッハッハ

裸王「そういう訳だ!もうその件は言いっこ無しということにしようではないか!」マッスル

赤鬼「お、王がそう言うのなら…」

裸王「うむ!拳を交えた以上我等はもう仲間!堅苦しいのは無しだ!」ガッハッハ

111: オプ速さん 2015/02/24(火)21:34:49 ID:AlB
赤ずきん「ねぇ裸王、本題に入っても良いかしら?」

裸王「うむ!どうやら赤鬼の謝罪のためでもただ遊びに来たというわけでも無さそうだ、私に何か頼みでもあるのかね?」マッスル

赤鬼「実は来るべき戦いに備えてキモオタにティンク、赤ずきんは【シンデレラ】の魔法使いに新たな魔法具を作って貰うことになったんだ」

赤ずきん「そう、そして裸王にはその為に必要な鉱石を支援して欲しいのよ」

裸王「ほう!なんという鉱石が必要なのだ?」ムキムキッ

赤ずきん「種類は聞いていないけれど、必要なのは強度の高い鉱石という事だったわ」

裸王「なるほど…よし、わかった!心当たりのある鉱石をいくつか手配しておこう!我が国の鉱石はどれも上質だぞ!きっとお主等の力になるだろう!」マッスルポーズ

赤鬼「随分と頼りになる王だな、これだけ国が栄えているのも納得だ」ヒソヒソ

赤ずきん「屈指の善王よ彼は、上半身裸であることを除けばね」ヒソヒソ

112: オプ速さん 2015/02/24(火)21:39:58 ID:AlB
裸王「しかし、ティンクと赤ずきんが魔法具を手にするのは理解できるが…解せんのはキモオタだ!おそらくは今もだらしない肉体のままなのだろう?」ムキムキ

赤ずきん「ええ、そのとおりよ」

裸王「まったく嘆かわしい!研鑽も積まず力を手に入れようとは!」マッスル

裸王「まずは己の筋肉に磨きをかけることが優先ではないのか!!」ババーン

赤鬼「ふむ、確かにキモオタはもう少し体を鍛えるべきだな。体が資本なのは鬼も人間も同じだ」

裸王「その通り!赤鬼は理解してくれるか!男たるものまずは筋肉!そうでなければ始まらぬからな!ガッハッハ!」ムキムキ

赤ずきん「……」

裸王「おっと話がそれてしまったな!では数日の間は我が国に滞在すると良い、鉱石の手配はなるべく急がせるが…流石に今すぐにというわけにも…」

赤ずきん「そうしたいけれど…実は私達はもう次に行くところを決めているの。必要なのは鉱石だけではないから。だからそちらが一段落ついたらもう一度ここに来るわね」

裸王「そうか…一緒に食事でもと思ったが残念だ!」ムキムキ

113: オプ速さん 2015/02/24(火)21:48:06 ID:AlB
赤鬼「それと鉱石の礼だがどれくらいの値を用意すればいい?それも聞いておかないとな」

裸王「むっ?何を言ってるのだ!金など不要!私はお主等と違い旅にでることが出来ぬからな、これくらいの援助はさせて貰うぞ!もちろん、この筋肉が必要とあらばいつでも呼んでくれて構わんがな!」マッスル

赤ずきん「あら、申し出はありがたいけれど…高価な物もあるでしょう?無料というわけにはいかないわよ。お礼くらいさせて頂戴」

裸王「むむっ…いや本当に礼など……」

裸王「……しかし、お主等の気が収まらぬのならひとつ協力して貰おう!大臣よ、礼のアレを赤ずきん達に見てもらおうではないか」マッスル

大臣「あれを…いいのか裸王?恥になるのでは…」

裸王「何故だ?もちろん構わぬぞ!赤ずきんならば年齢的にも的確な意見が出せるだろうからな!」マッスルポーズ



……数分後



大臣「裸王、礼のアレだ」スッ

裸王「うむ、ご苦労!では赤ずきんよ、鉱石の礼というわけではないがこれを見て意見を聞かせて欲しい」ガサゴソ

114: オプ速さん 2015/02/24(火)21:55:17 ID:AlB
赤ずきん「私に見て欲しいもの?なにかしら」

裸王「うむ、知っての通り我が国には多くの旅人や観光客が訪れる。その者達は遠路遙々足を延ばしてくれたのだから思う存分楽しんで貰いたい!」ムキムキッ

裸王「出国時に記入を頼んでいるアンケートの結果ではおおむね満足して貰えているようなのだが、どうやら子供向けのお土産が少ないという意見が多いのだ」

赤鬼「そうなのか?土産物の菓子ならいろんな場所で売っていたのを見たぞ」

赤ずきん「お菓子ではなくて形として残る物を…という事かしら」

赤鬼「そういうことか、見るだけで旅の思い出が蘇るようなものだな?」

赤ずきん「硝子細工や貝殻のアクセサリーとかかしらね?」

裸王「うむそうだな、今までも鍛錬に最適な『裸王ダンベル』や、私も愛用している食器『ロイヤルマッスル』シリーズや、鍛錬のお供に欠かせない『裸王スポーツタオル』と豊富なラインナップを揃えていたつもりだ!
だが、確かに子供向けの商品は無かったのだ。
そこで王国では私が監修の元、子供向けお土産としてこんな物を作ってみた!」

スッ

115: オプ速さん 2015/02/24(火)22:01:42 ID:AlB
赤ずきん「……何なのこれ」

赤鬼「裸王の姿が彫刻された鉱石…いや、人形か?」

裸王「ただの人形ではないぞ!その名も『おしゃべり裸王くん』!特定の筋肉部分を強く押すことで私の音声が流れる!わざわざ友好国から国家魔術師を呼び寄せて作り出した自慢の品だ!鉱石も特別な物を使っているぞ!」マッチョ

赤ずきん「それを私にどうしろと言うのよ…」

裸王「まぁ待て、まずは『おしゃべり裸王くん』の性能を見て貰おう!上腕二頭筋の部分を押してくれ!」

赤ずきん「じょうわんにとう…?そんな知ってて当然というように言われても困るのだけど。ここかしら?」グイッ

シーン

裸王「おいおい、そこは上腕三頭筋だろう!マッスルジョークかね?ガッハッハ!」ポージング

赤ずきん「……赤鬼」ポイッ

赤鬼「上腕二頭筋ってぇと…ここだろ?よっと」グイッグイッ


ワガナハラオウ!トモニキンニクヲキタエヨウゾ!

マッスルラリアーット!


赤鬼「……凄いな」

赤ずきん「…凄まじい魔法の無駄遣いじゃないの」

裸王「魔術師も目を丸くしておったわ!ガッハッハ!」ムキムキ

116: オプ速さん 2015/02/24(火)22:06:17 ID:AlB
裸王「しかしだな、実はこの『おしゃべり裸王くん』旅人や観光客にはまったく売れぬのだ!国民達は喜んでくれたのだがな。赤ずきんには君の年齢の目線でこれの改善案を出して欲しいのだ!どこか直した方がいいところはあるか?」マッチョ

赤ずきん「どこもなにも…鉱石の彫刻人形なんて子供は欲しがらないわよ」

裸王「ほう、なるほどな!メモしておこう!」マッスルメモ

赤ずきん「人形を作るならせめて布製になさいな、ぬいぐるみならまだ希望があるんじゃないかしら?そうね、こう…裸王をモデルにかわいいキャラクターを作ってみるとか、手段はあるでしょう」

裸王「ぬいぐるみ…!なんという斬新なアイディア!その線でいこうではないか!」ババーン

赤ずきん「…参考になったのなら良かったわ」

大臣「裸王、そろそろ時間だ。次の謁見希望者が待っている」

裸王「なんと、楽しい時間はあっという間だな!では赤ずきんと赤鬼よ、必要な鉱石はきちんと手配しておこう!旅に出るのなら我が王国の市場でいろいろと買い揃えていくと良いぞ!」マッチョ

赤鬼「そのつもりだったんだがな……」チラッ

赤ずきん「会うと気まずい相手が居るから向こうの世界へ行ってから町に寄ることにしたのよ。直接海へ行きたかったのだけど…下手に町をうろついて雪の女王に会いたくないもの、少なくとも今はね」

117: オプ速さん 2015/02/24(火)22:08:37 ID:AlB
裸王「そうかそうか!今日は実に貴重な意見をありがとう!気をつけて旅を続けるんだぞ!」ムキムキ

赤ずきん「ええ、もちろん。それと、この人形は返しておくわね」

裸王「それには及ばぬぞ!せっかくだからな、すばらしい意見をくれた赤ずきんにプレゼントだ!ガッハッハ!」マッチョ

赤ずきん「……正直、困るのだけど」ボソッ

赤鬼「…さ、さぁ行こうか赤ずきん!裸王、それじゃあオイラ達はこれで!」

裸王「うむ、また会える日を楽しみにしているぞ!」マッスルポーズ

赤ずきん「ええ、それじゃあね裸王。鉱石の手配引き受けてくれてありがとう。行くわよ、赤鬼」

赤鬼「おう!」

赤ずきん「…ずきんよずきん、私達を『人魚姫』の世界へ連れて行って頂戴」



ヒュン

118: オプ速さん 2015/02/24(火)22:14:20 ID:AlB
人魚姫の世界 町外れの丘

ヒュン

赤鬼「ここがおとぎ話【人魚姫】の世界か…ちょうど良いところに出たな、この丘からなら辺りの様子が一望できる」ドスッ

赤ずきん「そうね、立派な城と城下町…大規模な港があるところを見ると漁業や貿易で富を築いたのかしらね」スタッ

赤鬼「そうだな、船も多く停泊しているからな…だが、どうも引っかかるぞ…」

赤ずきん「あら?どうしたのかしら、何か気になることでもあるの?」

赤鬼「これだけ大規模な港だってのにどうも港の人の動きがまばらなんだよ。オイラが居た国でも漁港ってのはあったんだがもっと活気があったぞ?大きな船もあるってのに、不自然じゃねぇか?」

赤ずきん「私の住んでいた所には海は無かったからよくわからないけれど…確かにそう言われてみれば不自然かもしれないわね」

赤鬼「このおとぎ話は人魚が主人公なんだろう?もしも海に何か異変があるならまずいんじゃねぇか?」

赤ずきん「そうね、この【人魚姫】のおとぎ話において海は重要な舞台になってくる。あの人気の少ない港が物語の進行に関連がなければいいけれど…」

119: オプ速さん 2015/02/24(火)22:15:52 ID:AlB
赤ずきん「ここで考えていても始まらないわね、まずは食料や道具の調達をしたいから町へ行きましょう」

赤鬼「町へ行けば何かわかるか…市場なら人の出入りも多いから情報も手に入るな、よし行くか」

赤ずきん「ちょっと待って頂戴、ひとつ確認しておかないといけないことがあるのよ」

赤鬼「ああ、【人魚姫】の物語の内容だろ?オイラはわからないからお前に聞こうと思っていたんだよ」

赤ずきん「…それもだけれど、別の事なの」

赤鬼「別の?なにか確認することなんかあったか?」

赤ずきん「このおとぎ話は人魚の物語、場合によっては私達も海へ入ったり泳いだり潜ったりしないといけないのだけど…あなたは泳げるわよね?」

赤鬼「まぁそうだな、普通の鬼程度には泳げるぞ?一応普通の人間よりは早いし息も長く続く」

赤ずきん「そう、あなたが泳げるのなら問題ないわね」

120: オプ速さん 2015/02/24(火)22:19:30 ID:AlB
赤鬼「…赤ずきん、お前はもしかして泳げないのか?」

赤ずきん「…あら、どうしてそう思うのかしら?」

赤鬼「…いや、なんとなくなんだが」

赤ずきん「……」

赤鬼「……」

赤ずきん「……今まで泳ぐ必要がなかっただけよ」プイッ

赤鬼「ま、まぁ住んでた場所の近くに海や川が近くにないなら泳ぎが分からなくたって恥ずかしくないだろ、気にする事じゃねぇよ赤ずきん」ポンポン

赤ずきん「気にしてなんかいないわよ。頭をポンポンするのはやめなさい。ただ、この事でまたあなたの足を引っ張ることになってしまうのは避けたいの。だから私は海へは入らない。そのつもりでいてほしいの」

赤鬼(鬼ヶ島での一件を随分と気にしてるんだよなぁ、赤ずきんは。気にするなと言ってもこいつの性格じゃあ逆効果か…)

赤鬼「おう、わかった。ところで赤ずきん、さっきも言ったがオイラは【人魚姫】の内容を知らないんだ、教えてもらえるか?確か、悲しい結末なんだよな?」

赤ずきん「ええ、町へ向かいながら教えてあげるわね。【人魚姫】がどんなおとぎ話なのかをね」

121: オプ速さん 2015/02/24(火)22:21:35 ID:AlB
赤ずきん「まずは人魚についてだけど、あなたの国にも人魚の伝説はあったのよね?」

赤鬼「伝説というか噂だな、上半身は人間で下半身は魚…あとは嘘か誠かその肉を食うと不老不タヒになる。その程度の知識しかないぞ」

赤ずきん「不老不タヒの真偽はさておき、外見においては概ねその認識で構わないわね。他の特徴としては…水中ではどんな魚や海獣よりも高い敏捷性を持ち、女性の人魚は竪琴を奏でたかのような美しい声を持っているそうよ」

赤鬼「ほう、それでどんな内容なんだ?このおとぎ話は」

・・・

人魚姫

ある海の底には人魚の国がありました。
その人魚の国の王様には六人の美しい娘がいました。
特に末娘の人魚姫は姉妹の中でも一番の声を持っていました。

人魚姫が十五歳の誕生日の夜に海から顔を出すと、そこには立派な船が浮かんでいました。その船は陸にある国の船で、その国の王子様が乗っていました。
しかし、その船は難破してしまい多くの人々と一緒に王子様は海の中へと沈んでいきます
人魚姫は気を失った王子様をなんとか助け出して陸まで運びます。しかし人魚は陸に上がることが出来ず、そして人間に姿を見せてはいけないのです。
人の気配を感じた人魚姫は王子が息をしている事に安心すると海の底へと帰って行きました。

王子様は近くの町に住む娘に介抱されて元気を取り戻しました
しかし王子様に恋をしてしまった人魚姫は王子様にもう一度会いたいと願い、海底に住む魔女を訪ねました。

事情を聞いた魔女は人魚姫に人間になれる薬を差し出しました。
ただしそれは人魚姫の美しい声と引き替えであるうえに、王子様が人魚姫以外の女性と結婚してしまうと人魚姫は泡となって消えてしまうという薬でした
けれど人魚姫は自らの声を差しだし、薬を飲むことにしました。

人間の姿を手に入れた人魚姫は王子様と再会しました。
口のきけない人魚姫に対して優しい王子様はまるで家族のように接してくれました。
しかし、あの日王子様を介抱した娘が見つかると王子様は喜んで娘に結婚を申し出ます
人魚姫は本当のことを言いたくて仕方がありませんでした

けれど彼女はもう喋ることが出来ません

王子様の結婚が迫ったある日、人魚姫のお姉さんは彼女に一本の短剣を手渡します
それはお姉さんが自らの美しい髪の毛と引き替えに魔女から手に入れた短剣で、それで王子を刺し殺してその血を浴びれば人魚姫にかけられた魔法は解けるのです。

人魚姫は意を決して、短剣を握りしめて王子の元へと向かいますが彼にそれを振り下ろすことが出来ませんでした

結婚式の翌朝、人魚姫はその身を海へと投げだしました
泡となって消えた人魚姫はやがて空気の精となりそのまま天へと昇っていきました

おしまい

・・・

122: オプ速さん 2015/02/24(火)22:26:52 ID:AlB
赤ずきん「と、このような内容よ。赤鬼…」

赤鬼「うおおおぉぉぉぉ!!」ボロボロ

赤ずきん「ちょっと落ち着きなさいな、ただでさえ真っ赤なずきん被って長物持っている私と、布を巻いた武器を担いだ大柄で外套姿のあなたは凄く目立つのよ?その上騒いだりしたら……」チラッ

すれ違った旅人「……やべっ」フイッ

赤ずきん「ほら、ものすごく警戒されているじゃないの。これ以上悪目立ちするわけにはいかないわ」ヒソヒソ

赤鬼「でもなぁ…このおとぎ話悪い奴なんか居ねぇじゃねぇか!マッチ売りの親父や大悪鬼みたいな奴は居ねぇんだぞ?魔女はちょっと優しくしてやれよと思うけどな、でも王子も娘も人魚姫も悪くねぇじゃねぇか…!なんでこんな終わり方になるんだ!」

赤ずきん「まぁ、そうね。あなたの気持ちは分かるわよ。ちょっと種族が違って…少しだけ真実がねじ曲がって…人魚姫は恋破れて泡となって消える。切ないわよね…」

鬼神『フン、我ニハ理解デキヌナ。ソノ人魚ノ娘モオ前ト同様二人間ナドトイウ生物二ウツツヲ抜カスカラコウナッタノダ。ソノウエ命ヲ落トスナド愚ノ極ミヨ』クックック

赤鬼「うるさいぞ鬼神…!お前にはわからねぇのか!人魚姫の苦しみg」

赤ずきん「いいから落ち着きなさい!鬼神の声はあなたにしか聞こえないのよ?私は事情を知っているから良いけれど周囲から見れば完全な不審者なの、ここで警備兵にでも目を付けられたら動きにくくなるでしょう?」

ヒソヒソヒソヒソ

赤鬼「た、確かにそうだよな…すまん」

赤ずきん「分かってくれればいいのよ。でもこれで理解してくれたかしら?【人魚姫】の物語を」

123: オプ速さん 2015/02/24(火)22:45:03 ID:AlB
赤鬼「ああ、わかった。現実世界の人間にとってはおとぎ話でもオイラ達おとぎ話の住人にとっちゃあこれが現実だからな。どうにかしてやりたい気持ちがでてきちまうが…」

赤ずきん「分かっていると思うけれど…」

赤鬼「結末を変えることが出来ねぇのは分かってる。これは【マッチ売りの少女】の時と同じだもんな」

赤ずきん「ええ、このおとぎ話の結末は『人魚姫が泡になって消える』事。それを防いで人魚姫の恋を成就させればこの世界は消滅してしまう、この世界を守るのなら人魚姫が泡になってしまう。両方救うことは出来ない。…残念だけど割り切らなければいけない所よ」

赤鬼「……」

赤ずきん「…私だって口では言っているけれど、割り切れるとは思えないわよ」ボソッ

赤ずきん「でもね、私はやっぱりおとぎ話を消したくない。世界が消えてしまったら何も残らないでしょう。楽しい記憶もつらい思い出も頑張った事も、友達や家族や尊敬する人も大好きな場所も全てよ?」

赤鬼「そりゃあ、オイラもそうなっちまうと辛いな…」

赤ずきん「【シンデレラ】の魔法使いに教えて貰った【赤ずきん】の内容はこうだったわ。悪い狼にそそのかされた私がおばあちゃんを巻き込んで食べられたところを猟師さんに助けられる。初めて聞いたとき笑ってしまったわよ?
だって、貧しい暮らしをしたわけでも、国民が父親に殺されるところを見たわけでも、種族の違いに悩んだわけでも、寒空の下で孤独を感じたわけでも、数奇な出生を悩んだわけでもない」

赤鬼「おいおい、お前のおとぎ話だろ?そんな風に言うのは…」

赤ずきん「でもね」

124: オプ速さん 2015/02/24(火)22:58:49 ID:AlB
赤ずきん「馬鹿な子供がまんまと騙されておばあちゃんや猟師さんに迷惑かけるだけのこんな物語でもね、あの世界は私のおとぎ話なのよ。そしてもう私しかあの世界のことを知っている人間はいない」

赤鬼「……」

赤ずきん「前にも言ったけれど、今更私はあの世界に戻れないし取り戻そうなんて思わないけれど…幼い頃から自分が生活して見聞きしそして色々なことを感じた世界がなくなってしまう。そんなの寂しいでしょう?」

赤鬼「……」

赤ずきん「もしも、私がおとぎ話の事情を知っていて…例えば【赤ずきん】の結末が『猟師さんが助けに来ず、狼に食べられた赤ずきんはタヒんでしまう』という結末だったとしても、私は自分の世界が消えてしまうくらいならその運命を受け入れたいと思うもの」

赤鬼「なぁ…赤ずきん、お前の覚悟も決意も理解できるけどな。もうちょっと肩の力抜かないか?もうお前は一人で旅してるんじゃねぇんだぞ?」

赤ずきん「……」

赤鬼「…な?女王とも約束したろ?ちゃんと出来るところみせねぇと、もうちょっと余裕そうにしてやろう。な?」

赤ずきん「そうね。余裕で旅をした方が、雪の女王も私を認めざるを得ないでしょうしね。ありがとうね、赤鬼」フフッ

125: オプ速さん 2015/02/24(火)23:08:39 ID:AlB
町 入り口付近

ざわざわ

赤鬼「さて、到着したぞ。どうやらそこまで暗そうな雰囲気って事はねぇが…」

赤ずきん「とりたてて活気があるとも言えないわね、こんなに大きな町なのに」

赤鬼「そうだな、丘の上でのあれは気のせいだったか?」

赤ずきん「どうかしらね、まずは市場の方へ向かいましょうか」


ドタドタドタドタ


おっさん達「うおおおぉぉ!どいたどいたー!そこの赤い嬢ちゃんとマントのおっさん!邪魔だぞ!」ガラガラガラガラ

赤鬼「おっさん…」ガーン

赤ずきん「何かあったのかしら?他にも何人か慌てて町を出て行くけど…」

旅の若者「どうやら南にある海岸にタヒ体があがったらしいよ?だからそれを回収というか確認というか引き取りにいくんだろうね。聞いた話だけどね」

赤ずきん「海岸にタヒ体が打ち上げられた…?どういうことかしら」

赤鬼「すまねぇが詳しく聞かせて貰おうか」

旅の若者「うん、構わないよ。聞いた話で構わないならね」

126: オプ速さん 2015/02/24(火)23:11:30 ID:AlB
今日はここまで 体調回復しました すまんかった

後半ちょっと書きためてなかったとこ書き足して遅くなってしまった
でも書きためは続けるんでまた貯まったら予告する

人魚姫編 次回に続きます