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引用元: http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1424001836/

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264: オプ速さん 2015/03/17(火)22:55:57 ID:NZS
スィー

人魚姫「あーもう!姉ちゃんはあたしの顔見たらディーヴァになれなれってそればっかり!」イライラ

人魚姫「昔はもっと優しかったのに、近頃マジで口うるさいし」イライラ

人魚姫「ディーヴァの仕事だってそーだっての、姉ちゃんがあんな仕事しなくたっていいのに…!」ムカムカ

人魚姫「人魚を守るためってのはわかるけどさー…」

人魚姫「人魚を守るために人間を殺すのってなんか違うじゃん。頭悪いあたしにだっておかしーってわかるのに、なんであんな仕事があんだろ…意味わかんない」

人魚姫「……あー!もう気分変えなきゃやってらんない!」バンッ

人魚姫「あっ、そーいえば姉ちゃんの執事が確か入り江に行くって言ってたっけ。あたしも行ってみよっかなー、あそこキレーな貝殻取れるし気分転換に海上に出てみるのもいいかも」

人魚姫「それにあの執事なんか慌ててたから、姉ちゃんから命令されたナイショのおつかいかもしんないし」

人魚姫「もしかしたら姉ちゃんのヒミツとかがわかって…うまくいけば弱みとか握れるかも!そしたらもう説教されないんじゃん?」ニヤニヤ

人魚姫「うんうん!テンション上がってきた!そうと決まったら急いで追いかけなきゃね!よーっし!全速力で泳いでくしかないっしょ!」

スイスィー

266: オプ速さん 2015/03/17(火)23:00:20 ID:NZS
秘密の入り江

赤鬼「おい、赤ずきん。聞こえるか?」ユサユサ

赤ずきん「……」スヤスヤ

赤鬼「…ダメか。声をかけても揺さぶっても起きないな…おとなしく薬を待つしかないか」

赤ずきん「……」スゥスゥ

桃太郎「……」グゥグゥ

赤鬼「聞いた人間を眠らせる歌……か。桃太郎の治癒能力にしろ雪の女王の評決能力にしろ余所の世界は未知のことだらけだな」

鬼神『フム、実ニ奇妙ナ能力ダ』

赤鬼「鬼神…」

鬼神『眠リトイウ無防備ナ状態へ誘ウトイウノハ、ナカナカニ侮レヌ。見ヨ、赤イ頭巾ノ娘モ…桃ヨリ生マレシ侍モタヒンダヨウニ眠ッテオルデハナイカ』クックック

赤鬼「タヒんだようにとか縁起でもないこと言わないでくれ、じきにあの人魚が二人にかかった魔法を解く薬を持って来てくれるんだ。二人はすぐに目覚めるさ」

267: オプ速さん 2015/03/17(火)23:01:32 ID:NZS
鬼神『……フンッ、甘イ甘イ。ダカラ貴様ハ青二才ナノダ』

赤鬼「どういうことだ?」

鬼神『アノ人魚ハ薬ナド渡スツモリハナイダロウ。モトヨリ…全員殺ス算段ダッタガ鬼ニ自分ノ歌ガ通用シナイトワカリ、次ノ手ヲ打ツ事二シタノダロウ』

鬼神『ドノヨウナ手ヲ使ウカワカラヌガ、気ヲ抜クナヨ赤鬼。アノ娘ハ貴様ヲ殺ス為二一度海ヘ消エタダケダ、殺ス手筈ヲ整エテ我等ノ前二再ビ現レルダロウ』

赤鬼「待て待て、なんでそう疑ってかかるんだ!人魚が言っていただろう?気が動転していただけなんだあいつは。我に返ってやり過ぎた事に気が付いた、だから薬を手配してくれるんだ」

鬼神『滑稽ダナ赤鬼。アノ娘ハ凄マジイ憎悪ヲ抱エテイタ、歌声ヲ上ゲル娘ノ瞳ハ確カナ殺意ヲ纏ッテイタゾ?』

鬼神『我ハ憎悪カラ生マレシ鬼神。憎悪、悪意、殺意……負ノ感情ヲ察知スルナド容易イ。アノ娘ノ抱エル憎シミハ青二才デアル貴様ノ説得デ緩ムヨウナモノデハナイ』

赤鬼「……」

268: オプ速さん 2015/03/17(火)23:05:04 ID:NZS
赤鬼「認めたくはないが、憎しみから生まれたお前が言うのなら、きっとそれは真実なんだろう……だが!考えを改めることはできるだろ!憎しみ殺し合って種族間でいがみ合うより共存するほうがいいに決まってる!」

鬼神『我ニハ人間ト人魚ノ確執ヤ共存ナドニ興味ハナイ。アノ二人ガ二度ト目覚メヌトシテモ知ッタコトデハナイ。ダガ貴様ノ肉体ハイズレ我ノモノトナル、コノヨウナ場デ易々ト命ヲ落トサレテハ迷惑ダ』

赤鬼「……ただ少しだけ外見や習慣が違うだけで何故こうもわかりあえないんだ…人間も人魚も鬼も争う必要なんか無いだろ!」

鬼神『無理ナ話ダ、種族ガ存在スル数ダケ諍イハ必ズ起キル……』

ザバザバー

鬼神『ヌッ、ドウヤラ何者カガ近ズイテイルヨウダナ……赤鬼、油断セヌヨウニスルノダ。相手ハドノヨウナ手ヲ打ッテクルカワカラヌノダカラナ』

赤鬼「……油断はしない、だが敵視もしないぞオイラは」

鬼神『好キニシロ……ダガ圧倒的破壊力ガ必要ナラバ我ヲ出ス事ダ。尤モ借リウケタ肉体ヲ返スツモリハ無イガナ』クックック

赤鬼「……」

ザバザバー

執事魚「すいません、あなたが鬼さんですか?」バシャバシャ

269: オプ速さん 2015/03/17(火)23:10:46 ID:NZS
赤鬼「ああ、そうだが……お前さんは何者だ?」ザバザバ

執事魚「あっ、申し遅れました!ワタクシ、人魚の国の執事を勤めております。先程、姫様があなたにお世話になったとお聞きしまして」ペコリ

赤鬼「姫…?あいつ姫なのか!?」

執事魚「? えぇ、はい、6人いらっしゃる姫様のうちの一人でございます。長女らしくしっかりしたお方で、姉妹の中で尤も美しい髪の毛を持っていると言われておりまして」

赤鬼(そうだった、人魚姫には姉がいるんだったな。そしておとぎ話【人魚姫】の主人公は末妹。桃太郎が治癒した人魚は人魚姫の姉だったという事か)

執事魚「本来ならば姫様が出向くはずでしたがまだ傷が完治しておりませんのでワタクシがお礼の品をお持ちしました…どうぞお納めください」スッ

赤鬼「いやいや、礼なんていいんだ。それよりも人魚の歌声で眠らされたあの二人を目覚めさせる薬を頼んだんだ、すまないがそれを先にくれないか?」

執事魚「え、ええ、それはそれとして…先に貴方様にこの薬を飲んでいただきたい。なんと不老不タヒの薬ですよ!すばらしい秘薬です!」

赤鬼「いや、すまんが不老不タヒには興味がないんだ」

執事魚「えぇっ!?不老不タヒですよ!?」

赤鬼「すまん、お前の主人には気持ちだけ受け取っておくと伝えてくれるか」

執事魚(不老不タヒが目的で多くの人魚が捕らえられているというのに、こいつは興味ないというのか!?バカな!)

270: オプ速さん 2015/03/17(火)23:12:52 ID:NZS
執事魚「ですが、キチンとお礼を受け取ってもらったか確認するように厳しく言いつけられておりまして…」アセアセ

赤鬼「まいったな…オイラ達は礼が欲しくてあの人魚を世話したわけじゃないんだ。だから不老不タヒの薬はいらない。それよりも友達があの歌声で眠らされたままなんだ、目覚めさせる薬さえ貰えればそれでいいんだが」

執事魚「う、うぅ、参りましたね…いや、ここはもう飲んだことにしてください。じゃないと報告できませんので!」グイグイ

赤鬼「な、なんだ…お前さん強引だな……っ!」

ザバー

人魚姫「飲んじゃダメだよ、その薬」


赤鬼「なんだ…さっきの人魚より随分と若い人魚だが…お前さんの知り合いか?」

執事魚「に、人魚姫様…!?ど、どうしてここに…!?」ビクビク

人魚姫「気をつけなねお兄さん、そいつウソついてるからさ」

赤鬼「なにっ?嘘だと?」

人魚姫「そっ、この薬が不老不タヒの薬ってウソだよ。人魚の国にそんなの存在しないしさ、たとえあってとしてもチョーレアな薬じゃん。姉ちゃんの判断であげたり出来ないっしょ?」パシッ

執事魚「あっ、お返しください!人魚姫様!」

271: オプ速さん 2015/03/17(火)23:14:30 ID:NZS
人魚姫「なんだかそのお兄さんにやたらと飲ませたがってたけどさー、なんなのこれ?まっ、だいたい想像つくけどー…試しにあんたが飲んでみてよ、ほら」グイグイ

執事魚「えぇっ!?ワタクシがですか!?お、恩人へのお礼をワタクシが口にするなんてできませんよ!」

人魚姫「できるっしょ?お兄さんもともと要らないって言ってたし、あんたが飲んでも姉ちゃんにはバレないバレないー。それに不老不タヒだよ、やったじゃーん」ニヤニヤ

執事魚「わかりましたわかりました!本当にやめてください!まだタヒにたくないんです!不老不タヒというのは嘘なんです!」ウワアァァァ

人魚姫「ほらやっぱりそーじゃん。で?どーせこれ毒薬っしょ?」

赤鬼「なっ、毒薬…!?そうか、だから先にオイラに飲ませようとしていたのか…!」

執事魚「うぅ……その通りです」

人魚姫「ねー、お兄さんどーする?こいつあんたに毒薬飲ませようとしたわけだけどさ」

鬼神『鬼ヲ騙ソウトシタ報イハ受ケテモラウ。無論、焼魚ニシテ喰ラウ他アルマイ』

赤鬼「いや…逃がしてやってくれ。そいつもあの人魚に言われてやっただけだろうからな、それにオイラは生きてる。なんの問題もない」

272: オプ速さん 2015/03/17(火)23:15:57 ID:NZS
人魚姫「そっか、ありがとね。だってさ、よかったね優しい人で。でも姉ちゃんにはごまかしておいた方がいーかんね?失敗したってバレたらあんたもまずいっしょ?」

執事魚「うぐ、わかりました…姫様にはうまく誤魔化しておきます…」

人魚姫「じゃーあたしもナイショにしとくね!そのかわりあたしがここに来たこともナイショだかんね?」シーッ

執事魚「わ、わかりました…くれぐれも内密に…!では失礼します」

ジャボーン

赤鬼「…うむ、助かった。危うく殺されてしまうところだった、礼を言おう」ペコッ

人魚姫「んーん…謝るのはこっちっしょ?ゴメン…なんか命狙われちゃって。もう大丈夫だと思うからさ、マジゴメンね?」

赤鬼「いや、お前さんが悪いわけではないだろう…まぁ、衝撃は受けたがな…」

人魚姫「姉ちゃんと知り合い…なわけないか、何があったか詳しく聞かせてちょーだいよ……えっと?」

赤鬼「赤鬼だ、旅の途中で近くの街まで来ている」

人魚姫「おっけー、赤鬼ね。あたしは人魚の国の人魚姫!6人姉妹の末妹だよー、好きなよーに呼んでね赤鬼」

赤鬼「うむ、わかった。実はだな……」カクカクシカジカ

274: オプ速さん 2015/03/17(火)23:17:49 ID:NZS
・・・
・・



人魚姫「あいつ…!信っじらんない!!」バーンッ

赤鬼「お、おい人魚姫落ち着け!」

人魚姫「なんで赤鬼は怒んないの!?大怪我した姉ちゃんを助けて手当してあげたのに友達を眠らされたあげくあんたのこと騙して殺そうとしたんだよ!?あいつ!」イライラ

赤鬼「怒っていないと言えば嘘になるが、しかしここで憤ってもしかたないだろう。それにどうやら人魚は人間との間に因縁があるようだし…詳しく知らないオイラが口を挟むわけにもいかんだろう」

人魚姫「…まぁうん、人間とはちょっとねー…でもあたしはそんなに気にしてないけど、姉ちゃんはディーヴァだから特に人間嫌いなんだよねー」

赤鬼「ディーヴァ?…ああ、ところで事情は話したとおりだ。あそこで眠っている友達を目覚めさせたいんだが、何か方法はないのか?どれくらい眠ったら目覚めるとかないのか?」

人魚姫「あー……その金髪の女の子とイケメンのお兄さんか、姉ちゃんの歌声聞かされちゃったって言ってたっけ。だったらもう二度と目は覚めない、どんなおっきな音でも無理。姉ちゃんなら解けるけどそれは期待できないしー」

276: オプ速さん 2015/03/17(火)23:21:14 ID:NZS
赤鬼「二度と覚めないって…どうしても方法はないのか!?」

人魚姫「うー…方法がないわけじゃないけどさ。あれはちょっとなぁー……」ウーン

赤鬼「どうすりゃいいんだ!?薬が必要なのか?なんでもするぞオイラは、だからこいつらを助けてやってくれ」

人魚姫「…なんでも?」

人魚姫「なんでもっつったよ今!じゃあ助けたらなんでもお願い聞いてくれんの?」ワクワク

赤鬼「う、うむ!出来ることならなんだって聞いてやる」

人魚姫「じゃああの金髪の女の子に…よしっ!」

赤鬼「……?」

人魚姫「じゃあやっちゃいますか!あーっ、うんうん…喉の調子はそこそこって感じ?」アーアー

赤鬼「何をするつもりだ?まさかお前も歌でなんとかできるのか!?」

人魚姫「まぁそゆこと、あたし達人魚の王族は女だけ歌声に特別な能力が宿るの。姉ちゃんが人間を眠らせたようにね…私はちょっと特別だけどね…よし、じゃあいくよ」



人魚姫「今、あたしの歌を聴いた人間はみんな…『眠りから覚める』!いっくよー…ラーラーララーラララー♪」

277: オプ速さん 2015/03/17(火)23:23:48 ID:NZS
人魚姫「ラーラーララーラーラララー♪」

桃太郎「グゥ…………はっ!拙者は……」ガバッ

赤鬼「桃太郎!目が覚めたみたいだな、よかった!」ウオォォ

桃太郎「そうか…拙者はあの人魚の歌を聴いて眠りに落ちてしまったのだったな…そうだ、赤ずきんはどうした?あいつも人魚の歌を聴いていただろう」

赤ずきん「スゥスゥ……スゥスゥ……んっ……んん……」ムニャムニャ

桃太郎「どうやらまだ半分眠っているようだが……無事のようだな、赤ずきん起きるんだ。赤鬼殿が拙者達を助けてくれたのだ、さぁ目覚めよ」ユサユサ

赤鬼「おい、桃太郎…赤ずきんを無理に起こそうとすると」

赤ずきん「……わたしはもう……おきてる……zzz」ヒュッ

桃太郎「……っ!」ペチン

赤鬼「寝ぼけてるから平手打ちされるぞ、気をつけろ」

桃太郎「……次は早めに教えてくれると助かるのだが」ジンジン

人魚姫「あははっ!イケメンが平手打ちくらってるとかチョーうける!」ケラケラ

278: オプ速さん 2015/03/17(火)23:26:47 ID:NZS
人魚姫「ねっ、ねっ!あんたもう目ぇ覚めたっしょ?だったらさ、早く起きて欲しいんだけどー」オーイ

赤ずきん「んっ……ねえ赤鬼、あの人魚…だれ?」グシグシ

赤鬼「ああ、オイラ達が助けた人魚の妹らしい。末妹だって言っていたからな【人魚姫】の主人公だろう。あいつがお前達を助けてくれた」ボソッ

赤ずきん「ああ、そうなのね……運が悪かったのか良かったのかわからないけれど……」グシグシ

赤ずきん「初めまして、私は赤ずきん。あなたが目覚めさせてくれたんですってね、助かったわ」

桃太郎「うむ、かたじけない。拙者は桃太郎。よろしく頼む」スッ

人魚姫「おっけーおっけー!赤ずきんと桃太郎ね、あたしは人魚姫。よろしくね」ニヘラー

赤鬼「オイラからも改めて礼を言おう。友人を助けてくれてありがとうな人魚姫」

人魚姫「いやーいいって、結局は恩知らずな姉ちゃんが眠らせちゃったのが原因だしね。あっ、でも赤鬼!約束は守って貰うから!」

赤鬼「お、おう…お手柔らかにな」

赤ずきん「約束…?赤鬼、あなた何を約束したの?まさか、私たちを救うために無茶な要求を飲んだんじゃ…!」バッ

人魚姫「大丈夫だいじょーぶ!赤鬼が何かする訳じゃないし、っていうか実際にやるのはあんただよ~赤ずきん」ニヤニヤ

279: オプ速さん 2015/03/17(火)23:27:32 ID:NZS
赤ずきん「……私に何をさせるつもり?」ジリッ

人魚姫「そんな身構えなくたっていいって~、ちょっと私の夢の手伝いをして欲しいだけだからさ。今日はもう時間も遅いし続きはまた明日にしよっ!あたしももー眠いし」

赤ずきん「待って頂戴、あなたには他にも頼みがあるのよ」

人魚姫「じゃあそれも明日聞くよ、時間はたっぷりあるからさ!じゃあ明日の昼前にはここに来ててよ、そーだ…赤鬼、明日ここに来る前に買ってきて欲しい物があんだよね」

赤鬼「ん?おう、何を買ってくるんだ?」

・・・

桃太郎「何というか、姫にしては随分と奔放な娘だな。拙者の国の姫君と比較するのも違うのかも知れぬが……」

赤ずきん「そうね、でもきっと悪い人魚ではないでしょう。それに助けてもらったわけだから出来る限りの事はしなければね、ところで桃太郎はどうするの?すぐに戻りたいなら送るけれど…」

桃太郎「そうだな…折角の機会だ、犬猿キジ達に珍しい土産の一つでも用意したい。拙者を元の世界へ送り届けるのは明日にしてもらえるか?」

赤ずきん「そう、それなら明日にしましょう。あなたの世界ではお目に掛かれない物がたくさんあるからきっと彼等も喜ぶでしょうね」

桃太郎「そうだな、たまにはきび団子以外の菓子も食わせてやりたいものだ」ハハッ

280: オプ速さん 2015/03/17(火)23:29:28 ID:NZS
翌日
秘密の入り江付近

ギーコギーコ

桃太郎「街で買い物をしていたら昼を過ぎてしまったな……もう赤ずきん達は入り江に着いているだろう、急がねば」ギーコギーコ

桃太郎「しかし、拙者の国とは街の様相から人々の風貌まで何から何まで違っていたな……よい経験となった」

桃太郎「同じものは空の青さと海の広さ…そして店先で売られている菓子がなんとも旨そうに見えてしまうことだ。つい買いすぎてしまったな…街の童達にも分けてやるとしよう」フフッ

桃太郎「さて、入り江が見えてきたぞ……」

桃太郎「……ん?」

桃太郎「……赤鬼殿と人魚姫、と赤ずきん……のはずだが」



桃太郎「何をしているのだあいつら……」

281: オプ速さん 2015/03/17(火)23:32:41 ID:NZS
秘密の入り江

人魚姫「いーねいーね!やっぱり実際に着けてみないとアクセサリーの善し悪しなんかわかんないんだよ、赤ずきんチョーかわいいよー」ヘラヘラ

赤ずきん「……そういうのいいから早くして頂戴」

人魚姫「ふんふん、じゃあねー今度はそっちのピンクのフリフリの洋服と…そうだなぁ、あれなら…これかな、このネックレス合わせてみてよ」スッ

赤ずきん「……また着替えるの?もうどの洋服だって同じじゃないかしら、あなたは自分の作ったアクセサリーが人間にも似合うのかどうか見たいでしょう?」

人魚姫「わかってないなぁ赤ずきんは、違うっしょ?アクセサリーってのはそれだけ身につけるわけじゃないじゃん、人間はさ」ハァー

人魚姫「人魚と違って人間は服を着るっしょ?だからアクセサリーも毎日同じってわけにいかないじゃん、今日の服にはぴったりだけど明日の服にはイマイチってなるじゃん?」

人魚姫「だからさ、いろんな服との組み合わせをチェックしておきたいわけよ、アクセサリーを作るプロを目指すあたしとしてはね?」

赤ずきん「……わかったわ、これに着替えればいいのね?」

人魚姫「そうそう、あっそのまえにちょっと笑顔でクルッと回ってくれるといいなぁ、そしたら赤ずきんが欲しがってるあたしの鱗もバッチリキレイに取れそうなんだけどー」ニヤニヤ

赤ずきん「……随分と足元を見るじゃないの。こんなのはもうこれっきりよ」クルッ

人魚姫「うん、やっぱりあのブレスレットは何にでも合うなぁ……ほら、赤鬼もちゃんと可愛いって言ってあげなきゃ寂しいっしょ?」

赤鬼「いや、もう、オイラに振るのはやめてくれ人魚姫。めちゃくちゃ睨まれてるんだよ」

赤ずきん「言わなくてもあなたならわかってくれるわよね?」キッ

赤鬼「ああ、雪の女王にもキモオタ達にも言わんから安心しろ、それに気にするほど恥ずかしいことか?」

赤ずきん「浮かれてると思われるのが嫌なのよ…」

桃太郎「……何をしているのだお前達は」ザッ

赤鬼「おお!いいところに来た桃太郎!こっちでオイラと茶の支度でもしようじゃねぇか!何とも耐え難い空気だったんだよ」

282: オプ速さん 2015/03/17(火)23:34:12 ID:NZS
桃太郎「赤鬼殿、差し入れの菓子だ。皆でつまんでくれ。それで…何をやっているのだあの二人は」スッ

赤鬼「ああ、すまんな頂こう。あの二人はあれだ、人魚姫が…なんつったかな、アクセサリーだったか?首飾りや腕輪を作る職人になるのが夢らしくてな、自作のそれを試しに赤ずきんにいろいろと着けてもらって具合を見ているらしい」

桃太郎「なるほど、どこの国でもおなごがそういった物に興味を持つのは同じと言うことか…にしても意外だな、赤ずきんはどこか冷めているところがあるからこのような事は嫌がりそうなものだが」

赤鬼「まぁなぁ、乗り気ではないだろうがあいつも律儀だからな。助けてもらった恩があるってのと、必要な『人魚姫の鱗』の事もあるしな……それになによりも」

・・・

人魚姫「じゃあ今度はこの髪飾り頼める?でね、なんというかこう無邪気な感じでくクルッと回ってくれっといい感じなんだけどなー」

赤ずきん「無茶言わないで頂戴…ほら、こう?」クルッ

人魚姫「やっぱり海中と陸だと色の映え方が全然違うなぁ、これは調整の必要あり…って感じ。人間の服って肩や胸元が隠れる服が多いからネックレスはもっとシンプルに……」ブツブツ

283: オプ速さん 2015/03/17(火)23:36:13 ID:NZS
・・・

赤鬼「人魚姫の奴、ヘラヘラしてふざけてそうに見えるけど相当真剣にやってるんだよ。赤ずきんもそれをわかってるから協力してやってるんだろうな」

桃太郎「人魚姫にとってはそれが戦いなのだろう、戦いとは悪に立ち向かい断ち切ることのみにあらず。己の夢を追い、その道程にある障害を自ら乗り越え夢へと近づく…これもまた戦いなり」

赤鬼「違いない、まぁオイラ達はそれに協力するだけだ……っと茶を沸かそうにも薪がないな」

桃太郎「ならば拙者が拾い集めてこよう、奥の藪に入ればすぐであろう。一時、拙者の刀を見ていて貰えるか?このような場所に盗人など現れぬだろうが一応な」ガチャッ

赤鬼「そりゃあ構わんが……いいのか?大切なものだろう?」

桃太郎「だからこそお主になら任せられるのだ、この船縁に立てかけておくから時折見てくれ。ではしばし待っていてくれ…赤鬼」スッ

赤鬼「…おう、任せたぞ桃太郎!」

285: オプ速さん 2015/03/17(火)23:46:40 ID:NZS
人魚姫「じゃあちょーっと疲れただろうし、ひとやすみしよっかー」

赤ずきん「ええ、そうね……赤鬼、水を一杯貰えるかしら」フゥ

赤鬼「なんだ、休憩か?すまんがまだ湯が沸いていないんだ、茶はもう少し待ってくれ…ほら、水だ」スッ

赤ずきん「ありがとう。悪いわねお茶の準備を任せっきりで」

赤鬼「今日はシンデレラに教わった紅茶っていう奴に挑戦するつもりだ、いつも緑茶だと飽きるだろう?人魚姫もこっちに来るといい、海底に住んでるなら茶も菓子も珍しいだろ?」

人魚姫「あーっと、すごく興味あるんだけどね?お茶っていうの海中にはないしさ、でも陸には上がれないんだ。ほら、あたしにはあんたたちみたいな足がないんだよね。人魚だししょーがないけどさー」

赤鬼「ああ、そりゃあ気がつかなかったな。すまん…」

赤ずきん「でも船縁に腰掛けるくらいはできるんじゃない?船の近くで準備すれば一緒にお茶できるでしょう?」

赤鬼「そうだな!船が燃えない程度に近づけば問題ないもんな、よし移動するか」

人魚姫「いいの?サンキューね、赤ずきん、赤鬼!じゃあ船縁に座って待ってますかー……っと」

ゴトッ

人魚姫「これって……桃太郎の持ってた奴だよね、確か刀とかいう……」





人魚姫「いーこと思いついちゃったんだけど…!」ニヤニヤ

ゴソゴソ

286: オプ速さん 2015/03/17(火)23:55:45 ID:NZS
・・・

ガサガサ

桃太郎「薪に使えそうな木を拾い集めてきた、これだけあればいいか?」ドサッ

赤鬼「ああ、十分だ!ありがとな桃太郎。じゃあちょっと待ってろよー」ガチャガチャ

赤ずきん「赤鬼から聞いたわよ、お菓子まで差し入れてくれたのね。どう?お供の彼等にいいお土産は見つかったのかしら?」

桃太郎「うむ、旨そうな焼き菓子があったのでな、それにした。いつもきび団子か柿だからな」

赤ずきん「キチンと多めに買っておいたかしら?彼等のことだからまた喧嘩するわよ?」クスクス

桃太郎「抜かりはない、この間も犬と猿がどっちが何個多くきび団子食べた食べてないで大喧嘩してな…」

赤ずきん「相変わらずなのね、賑やかでいいじゃない」クスクス

桃太郎「まぁそうだがな…しかし、賑やかといえば人魚姫はどうした?えらく静かだが?」

赤ずきん「あら?さっきはそこの船縁にいたけれど?」


人魚姫「おー、帰ってきてたんだ!オツカレー、差し入れくれた桃太郎にお礼代わりにいいものプレゼントしてあげるよ、はい」ヘラヘラ

ガチャッ

桃太郎「……ん?これは……!」

287: オプ速さん 2015/03/18(水)00:08:35 ID:y6H
キラキラキラ

桃太郎「これ……なに?」プルプル

赤ずきん「桃太郎の刀じゃないかしら?随分とキラキラしているけれど」

桃太郎「いや、それはわかるよ!なんでこんなにキラキラしてんの!?」

人魚姫「桃太郎の刀ってなんかデザイン地味じゃん?だからあたしがデコってあげたよー、ちょうど道具も持ってきてたし。かなりキレイっしょー?あたしデコるのもチョー得意なんだよねー」ヘラヘラ

赤ずきん「確かに、細かい貝殻や綺麗な石が規則的に配置されているわね。これは手先が相当器用じゃないとできないわよ?」

桃太郎「そういうのは聞いてないんだよ!なんで!?なんでそんなことしちゃったの!?」

人魚姫「いつも持っているってのは、持ち主のセンスがでるっしょ?だから桃太郎の刀もかわいくデコってセンスを示せるようにしたってわけ、なかなかっしょ?」ヘラヘラ

桃太郎「拙者の刀が……帝よりその名を賜りし『名刀・鬼屠り』が…!」

キラキラキラ

赤ずきん「随分と大仰な名前ね…」

桃太郎「どうすんだよこれえぇぇ!!拙者もう帝にあわせる顔がないわ!帝になんて言うのこれ!?人魚の友人にデコられましたって言えばいいのか!」

人魚姫「自慢しちゃえばいいじゃん?うまくデコれてるっしょ?って言えばいいよ、なんなら桃太郎が自分でデコったって言っても良いけど?」

桃太郎「なんの気遣いだよそれ!なこと言ったら打ち首になるだろ!もおおぉぉぉ!!勘弁してよマジでええぇぇ!!」

289: オプ速さん 2015/03/18(水)00:09:58 ID:y6H
今日はここまで!

新ジャンル・デコ刀

人魚姫編 次回に続きます

引用元: http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1424001836/